クローン病と腸内細菌の存在
クローン病を菌で治す時代が来る?
学生時代、同級生にクローン病を患っている子がいました。その子は腹痛を起こしてトイレに行くことが多く、毎日たくさんの薬を飲んでいました。
この子のようにクローン病は比較的、若い世代に多く、勉学やスポーツに勤しむ多くの学生や社会人が悩まされています。
クローン病はいまだに原因が不明でやっかいな病気ですが、最近ではそんなクローン病の発症や症状に「腸内細菌」の存在が関与しているといわれるようになりました。

・そもそもクローン病とはどんな病気か
クローン病とは、口から肛門まで続いている消化管にできる炎症性の疾患のことです。
その原因は不明で、現在、厚生労働省によって「特定疾患」と指定されています。
炎症性腸疾患(IBD)に分類されるものの一つで、1932年にニューヨーク大学のブリル・バーナード・クローン医師によって報告されたことからこの名前が付けられました。
クローン病はおもに20代以下の若い世代で多く見られ、中高年の世代ではあまり報告がありません。
回腸から盲腸にかけてが好発部位になります。
発症リスクが上がる要因として「喫煙」「受動喫煙」「ストレス」「経口避妊薬の常用」が挙げられ、どれもリスクは1.5~2倍上がるとされています。
現在のところはっきりとした原因はわかっていませんが、発症が若年層に顕著なことから
食の欧米化が引き起こしているという説や、
「ヨーネ病」に罹患した牛の乳製品を介してその原因であるMycobacteriumがクローン病を引き起こしているのではないかというような説があります

。症状としては「腹痛」「下痢」「発熱」などがあり、重症化すると「腸閉塞」「消化管穿孔」が生じ手術が必要になることがあります。
また、合併症として「関節炎」「壊疽性膿皮症」「虹彩炎」などがみられる場合もあるそうです。

クローン病と腸内細菌の関係性
2013年に、理化学研究所、東京大学、慶應義塾大学先端生命科学研究所のグループによって、とても興味深い研究が発表されました。
理化学研究所のHPによると腸内細菌が作る酪酸が体内に取り込まれて免疫系に作用し、制御性T細胞という炎症やアレルギーなどを抑える免疫細胞を増やす働きがあるということです。
つまり、私たちの腸には1000種類もの腸内細菌が暮らしていますが、その腸内細菌からは食物繊維を代謝することで「酪酸」がつくられて免疫細胞を増やして、消化管の炎症を抑えるということなのです。

クローン病などの炎症性腸疾患の患者には酪酸を作り出す腸内細菌が少ないのだそうです。

アメリカでは日本の10倍ほどのクローン病患者がいるそうです。
そんなアメリカの最新治療として「糞便移植」というものがあります。
健康な人の便を患者に移植することで腸内細菌が働くようになり、治癒率が上がったという臨床試験データがあるそうです。
別名、腸内細菌叢移植(FMT)とも呼ばれ、「再発性クロストリジウム・ディフィシル」「クローン病」などの難治性の炎症性腸疾患などの治療に対し、最近、世界中で行われるようになってきました。

このことからもやはり腸内細菌の存在が消化管の炎症に深く関わっていると考えられます。

・クローン病の食事療法とは
現在、残念ながらクローン病を完治させることは難しいといわれています。
体調がいいときはふつうに食事をしていい場合もありますが、基本的に消化管に負担をかけず、炎症を悪化させない食事がいいとされています。
クローン病の人は下痢などによって低栄養状態になる場合が多いので「高エネルギーの食事」が必要になります。
脂質は腸管の炎症を悪化させる恐れがあるため、「低脂肪の食事」を基本にします。
しかしDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸は炎症を抑えるといわれており、魚にたくさん含まれています。
なので唐揚げやとんかつなどの脂っこい肉料理よりも、魚料理の方が比較的おなかに優しいといえます。

ほかには食物繊維は腸に負担をかけるために控えること、
カレーや香辛料などの刺激物を控えることなどが挙げられます。